退去時の高額請求を防ぐ!知らないと損する原状回復の話

退去時のトラブル、意外と多いって知ってた?

「壁に小さな傷がついてるので、クロスを全面張り替えます。費用は6万円です」

 

退去立会いの場で、管理会社の担当者からそう言われたAさん(30代・会社員)は耳を疑いました。

 

生活していれば当然できるような小さな擦れや、家具の跡。それが“原状回復”という名のもとに思わぬ請求として降りかかることがあります。

 

SNSや口コミサイトを見ても、「原状回復費用が高すぎる」「納得いかないけど泣き寝入りした」といった声は後を絶ちません。特に一人暮らし初心者や初めての退去を経験する方にとって、退去時の高額請求は見えない不安の一つです。

 

この記事では、そんな退去時のトラブルを未然に防ぎ、安心して引越しができるよう、原状回復の正しい知識と実践的な対策を詳しく解説していきます。

そもそも「原状回復」ってどういう意味?

 

「原状回復=元通りに戻すこと」と思っている人も多いですが、実はこの認識が誤解の元です。

原状回復とは、「借主が通常の使用によって生じた劣化や損耗(いわゆる“経年劣化”)については負担しなくてよい」というのが国土交通省のガイドラインの基本的な考え方です。

 

たとえば、家具を置いたことによる床の凹みや、日焼けによる壁紙の色あせなどは“通常使用”とされ、借主が修繕費を負担する必要はありません。ところが、タバコによるヤニ汚れやペットによる傷、壁への釘穴・シール跡などは「通常を超える使用」とされ、原状回復の対象となるケースが多いのです。

 

また、敷金は退去時の修繕費用に充当されるのが一般的ですが、全額返ってくると思い込んでいた人が多額の差し引きを見て驚く…というのもよくある話です。

 

このように、原状回復には「どこまでが借主負担か」の明確な線引きがあるため、知識がなければ損をしてしまうリスクが高まります。

高額請求を避けるには契約前が勝負

 

退去時のトラブルを防ぐ最大のポイントは、「契約時にどれだけ注意深く内容を確認しているか」です。

賃貸契約書には“原状回復”に関する項目が必ず含まれており、「特約条項」に細かく条件が記されていることがあります。この特約がクセモノで、「通常使用での汚れも借主負担」とされているような場合、高額請求の根拠になってしまいます。

 

たとえば、壁紙の全面張り替えやハウスクリーニング費用の負担、床のワックス掛け義務などが記載されていれば、それがトラブルの火種となりかねません。契約時には「特約条項」を必ずチェックし、不明点はその場で確認しましょう。後回しにしてしまうと、いざ退去時に「契約時に同意されてます」と言われてしまうのがオチです。

 

また、入居時に“状態記録”を残すことも非常に有効です。スマホで壁や床、天井、キッチン、浴室などの写真を撮影し、日付つきで保存しておけば、退去時に「これは入居時からのものです」と主張できます。

 

さらに、不動産会社によっては「入居時チェックシート」を配布している場合もあります。これをきちんと記入して提出しておくことで、原状回復の責任範囲が明確になり、のちのちのトラブル回避につながります。

退去前にやっておくべき3つのこと

 

ある日、退去を1週間後に控えたBさんは、立会いの準備に追われていました。ところが、「何をやっておけばいいか、よくわからない」と困っていたところ、請求書で予想外の費用を見て後悔することに…。

 

そんな事態を防ぐために、退去前にやっておきたい具体的な準備を3つご紹介します。

1つ目は室内の写真を撮っておくことです。入居時と同様、家具を撤去した状態で、各部屋・設備の写真をしっかり残しましょう。これは証拠として非常に有効です。

 

2つ目はできる範囲の掃除を徹底すること。特にキッチン・浴室・トイレなどの水回りは、カビや水垢の発生がトラブルのもとになります。市販の掃除グッズを使って可能な範囲で清掃しましょう。ただし、業者並みのクオリティは求められないので無理は不要です。

 

3つ目は必要に応じて軽微な補修をしておくこと。たとえば壁の画鋲跡をパテで埋めたり、床の傷を補修シートで隠すなどの対処をしておくと、印象が大きく変わります。軽度な補修であれば、数千円で済むことも多いため、かえって高額な修繕費を避ける助けになります。

 

請求額に納得できないときの対処法

 

Cさん(20代・女性)は退去後に送られてきた請求書の内容に驚きました。なんと、20万円近い原状回復費用が記載されていたのです。事前に掃除も行い、特に目立つ傷もなかったはず…。しかし、管理会社は「契約書の特約に基づく請求」として一歩も引かず。こんなとき、泣き寝入りする必要はありません。

 

まずは、冷静に契約書・請求内容・写真などの証拠を整理しましょう。「請求の内訳が不明瞭」「通常使用による汚れと思われる」など、納得できない点を具体的に洗い出し、書面またはメールで交渉を行います。電話よりも、やり取りの記録が残る方法が望ましいです。

 

また、管理会社や貸主が応じない場合は、第三者機関に相談する方法もあります。

 

代表的なのが、以下の機関です:

  • 消費生活センター(全国に窓口あり)
  • 全国宅地建物取引業協会(宅建協会)
  • 不動産適正取引推進機構

 

こうした機関では、原状回復ガイドラインに基づいた助言や、場合によってはあっせんを行ってくれることもあります。

さらに、あまりに不当な請求と感じた場合は、法的手段も視野に入れる必要があります。内容証明郵便を送る、弁護士に相談するなど、冷静に証拠を集めて立ち向かう姿勢が大切です。

実はこんな物件なら安心!トラブル回避のコツ

 

「退去時のトラブルが怖い」と感じる方には、そもそもトラブルが起きにくい物件を選ぶことも重要な対策です。

 

まずおすすめなのは、大手管理会社が運営する物件。レオパレスや大東建託、大和リビングなど、全国展開している会社はトラブル事例も多く公開されており、ルールが明文化されているケースが多いです。

 

また、築浅物件やリノベ済み物件も安心材料になります。設備が新しく、借主側に原因のない劣化が少ないため、原状回復の責任を問われるリスクが下がります。

 

意外な穴場は、家具付き・フリーレント物件。これらは短期契約を前提としているため、退去時の対応もシンプルなケースが多く、原状回復費用が抑えられることがあります。

 

物件情報サイトで探す際は、「原状回復不要」「退去時クリーニング費込み」などの記載があるかをチェックしてみましょう。

次の引越しでは絶対に損しないために

 

ここまで読んで「これからは気をつけよう」と思っている方へ、次の引越しで損をしないためのアクションをまとめます。

 

まずは信頼できる物件情報サイトを使うこと。特にスーモでは、管理会社の評判や特約情報、敷金・礼金の有無が詳細に掲載されているので、不安材料を事前にチェックできます。

 

次に、引越し前のチェックリストを活用すること。たとえば、

  • 入居前の室内撮影
  • 契約書・特約のスクリーンショット保存
  • 入居後7日以内に気づいた不具合の報告

など、基本的なルールを自分なりにテンプレ化しておくと、どの物件に住んでも安心です。

さらに、引越し先が決まったら周辺環境の確認も忘れずに。意外と忘れがちですが、「近隣トラブル」や「管理がずさん」といった生活ストレスも退去理由や契約解除の原因になります。

もっと知りたい人へ:原状回復と賃貸契約のFAQ集

Q1:ペット可物件でペットの傷がある場合は?

→原則、借主負担になります。契約時に「ペットによる損耗は免責」とある場合は別ですが、特約がない限り修繕費を求められるケースが多いです。

 

Q2:途中解約すると費用はかかる?

→「短期解約違約金」が設定されている場合があります。特に1年未満で退去する場合、家賃1ヶ月分などが請求されることも。

 

Q3:審査が通らなかったけど古民家なら大丈夫?

→物件によります。スーモなどで“古民家再生”系の特集を探すと、大家さん直営の物件もあり、柔軟に対応してくれることがあります。ただし、管理が甘いこともあるので現地見学は必須です。

▶ 安心して住める物件を探したいあなたへ

 

退去時の高額請求に泣かないためには、日々の注意と事前の対策がすべてです。

そして何より、信頼できる物件選びがその第一歩。

 

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